ここでは企業ブランディング動画制作に役立つ書籍として「ブランド・アーキタイプ戦略 著者:マーガレット・マーク、キャロル・S・ピアソン 実務教育出版」を紹介します。特に注目してほしい内容などをピックアップし解説しています。
この本の副題は「驚異的価値を生み出す心理学的アプローチ」。確かにこのフレームワークを使えば、同カテゴリ商品から目立つための目印としてのブランドからさらに発展し、意味づけ価値づけのための体系を提供し、顧客のブランド体験をより豊かなものにできるかもしれません。
ブランドとは家畜を区別するため目印、焼き印をつけるという意味から派生しており、その商品やサービス、企業の「らしさ」のことを指しています。そしてブランディングとは、他と区別する差別化と言えます。
「ブランディングする」「差異化する」方法を考える場合、商品のほかの商品と何が違うのか?ほかの企業と何が違うのか?を洗い出したり、自社らしさとは何かを考えたりすることでしょう。
これでもし明確なブランディングの道筋がみえるのであれば、話は早いのですが、商品やサービス、自社の「らしさ」を実際に洗い出すと、商品・サービスレベルの話、会社の理念の話、などなど様々なレベルの意味や価値が混在してきます。
それをまとめるために「コンセプト」という形で30文字程度の一文にまとめるなどするケースもあるでしょう。
雑多な情報をそぎ落として、さらにそぎ落として、それを見ればすべてが説明されているような何かを作ることは可能かもしれません。しかし、これがなかなか難しいのです。なんとなく…それらしい…まとまっているようなものができているけれども、何かが抜け落ちてしまっている、もしくは何か単純化しすぎてしまったような感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。
そんな時に一つの打開策として、このブランドアーキタイプというフレームワークが役に立ちそうです。
ブランドアーキタイプではブランドを人格になぞらえます。その人格は心理学者カール・ユングの提唱した12の「元型」をもとにしています。
ブランドを表したコンセプトやキャッチコピーのような無駄のない一文というのは、時としてそこからの広がりをイメージすることが難しいケースがあります。
一方でブランドアーキタイプでは、人格になぞらえることで、それまで商品・サービス、会社のそれぞれの多様なイメージを、一人のストーリーとしてまとめていくことができるのです。
さらにはそのストーリーを伴った人格と対話をしたり、新たな事象を出会わせたりすることで、別の新しいストーリーが生まれてきます。
つまりブランドを人格化することで、イメージをストーリーとしてまとめるだけでなく、さらなる展開までをその人格のストーリーとしてイメージしやすくなるというわけです。
一つ例を挙げてみると、「カラフルで色彩豊かなら人生を創出するブランド」というブランドコンセプトがあったとします。そこにさらに「道化師」というブランドアーキタイプ(「道化師のようにカラフルで色彩豊かなら人生を創出するブランド」)を当てはめてみます。この道化師が加わることで、道化師から連想される様々なイメージが一気にわいてくるのを感じないでしょうか。
そのブランドの過去と未来のストーリーのイメージがより広がりやすくなるのです。
また本書では以下のように説明がされています。
人々にとってブランドを生き生きとしたものに変えるのは、アーキタイプの持つ「意味」なのだ。「ピノキオ」や「ビロードのうさぎ」のように、命のない物体に突然命が吹き込まれる物語を思い浮かべてほしい。アーキタイプがもたらす意味のおかげで、顧客は製品自体がまるで生き物であるかのように、製品と対話するようになる。製品と関係を気づき、製品のことを心の底から気にかけるようになる。つまり、アーキタイプとはブランドにとって“生命の鼓動”のようなものといってもいい。
引用元:マーガレット・マーク、キャロル・S・ピアソン著「ブランド・アーキタイプ戦略」(実務教育出版)
本書は500ページほどの分厚い本ですが、ブランドアーキタイプというフレームワークがどのように機能するか?また現在のマーケティングでなぜそれが求められているのかについて冒頭80ページ程度でまとめてあり、残りの約300ページ、12のアーキタイプの説明あてられ、残りの100ページは具体的なブランディングの実践に向けての指南書となっています。
一つ一つのアーキタイプの説明がユングの無意識の心理学ベースということもあり、そのキャラクターが非常に深堀りされて説明されています。また成功している様々な企業の事例を当てはめて説明されているため、形而上だけでなく具体的な企業活動イメージと照らし合わせながら読み進めることができそうです。
それぞれのアーキタイプがどのようなストーリーを生むのか?対話を生むのか、製品・サービス・自社への意味づけ価値づけを行っていくのかを考えるにあたり十分すぎるほどの示唆を提供してくれるでしょう。
なお12のアーキタイプとは、以下の通りです。目次のまま掲載します。
第Ⅱ部 楽園に憧れて
第4章 幼子 The Innocent
第5章 探検家 The Explorer
第6章 賢者 The Sage
第Ⅲ部 世界に足跡を残す
第7章 英雄 The Hero
第8章 無法者 The Outlaw
第9章 魔術師 The Magician
第Ⅳ部 人はひとりでは生きられない
第10章 ありふれた男女 The Regular Guy/Gal
第11章 恋人 The Lover
第12章 道化師 The Jester
第Ⅴ部 世界に構造を与える
第13章 援助者 The Caregiver
第14章 創造者 The Creator
第15章 統治者 The Ruler
各アーキタイプの詳細説明を一つ紹介すると、たとえばアーキタイプ「魔術師」では以下のような記述があります。
魔術師めいた人々は、ふつうの人が不可能だと思うような夢を持っていることが多いが、ビジョンを持ち、そのビジョンに向かってまっしぐらに歩いていくことこそが魔法の本質なのだ。物事がうまくいかないとき、魔術師は内面を見つめて自分自身を変える。すると外の世界も変わる。
引用元:マーガレット・マーク、キャロル・S・ピアソン著「ブランド・アーキタイプ戦略」(実務教育出版)
この魔術師には起業家などが当てはまるとしています。
たった2行の文章ですが、起業家のストーリーを豊潤に紡ぎだせそうな気がしてくるのではないでしょうか。
このように各アーキタイプについてそれぞれかなりボリュームをもって、また具体的な企業を例にあげて説明がなされています。
非常に分厚い本ですが、なんとなく合いそうなアーキタイプにあたりをつけて、その各アーキタイプの項目を読むだけでも、大きなヒントが得られるのではないかと思います。
本書にある12のアーキタイプに当てはめさえすれば自動的にブランディングがうまくいくとは考えませんが、ブランディングでどのような意味づけ、価値づけをしていけばよいのか?またそのためにどのようにイメージをまとめていけばよいのかを考える際にきっと有用な示唆を得られると思います。
ブランディングがなにかフワフワしているというような感覚が、地に足をつけてブランドと対話できるようになること、これがブランドアーキタイプというフレームワークの有用な点です。本書ではこれを意味管理システムと呼んでいます。
500ページの分厚い本ですが、ブランディングに何らかのフレームワークを持って根拠づけながら考えたいという方に特におすすめの書籍です。
また本サイトでは、映像関連の賞の受賞歴を持つ企業ブランディング動画制作会社の中で、特におすすめしたい会社を3社紹介しています。それぞれ会社の色がありますので、どの会社に依頼をしようか考えている方は、ぜひこちらをご覧ください。
企業の魅力を効果的に伝えるには、文字や画像だけでなく視覚的なアプローチが重要です。動画を活用することで企業の文化や価値観を直感的に届けることができ、ブランドの独自性を視覚化することで競争力を高め、顧客や従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。ここでは、そんな企業向けのブランディング動画制作を依頼できる、おすすめの3社をご紹介します。