ここでは企業ブランディング動画制作に役立つ書籍として「「物語」の見つけ方 著者:たちばな やすひと クロスメディア・パブリッシング」を紹介します。特に注目してほしい内容などをピックアップし解説しています。
経済産業省が2020年から実施している、1,000万円のブランデッドコンテンツ制作のための補助金制度J-LOD(5) は「ストーリー性のある」映像制作・発信を行う事業の支援です。
ブランディング動画(ブランデッドコンテンツ)では様々な形態が考えられますが、上記の補助金制度を利用する場合もふくめ、ユーザーをひきつけ、ユーザーに企業、商材について理解を深めてもらうためにストーリー性のある動画が求められています。
しかしストーリー性のあるコンテンツをつくるにあたり、なんとなく「お話」らしきものを作ることはできそうですが、どういうストーリーであればユーザーの関心をひき、魅了するのか?という問いに答えることは難しいことだと思います。
一方でハリウッド映画などでは、観るものを魅了し、関心をひき続け、感動させるための手法が発展してきています。ここで紹介する書籍「「物語」の見つけ方」は、その手法を踏まえたうえで、さらにわかりやすくポイントがまとめられています。
なお著者のたちばな やすひと氏はNetflix (ネットフリックス) で2019年に大きな話題になった山田孝之主演の「全裸監督」を企画プロデュースし、「ストーリーラボ」というサークルを運営し、シナリオ講座も開催しています。
この「「物語」の見つけ方」という書籍は、映画制作のための本というより、自己啓発本よりです。「夢中になれる人生を描く思考法」というテーマでより自分らしい生き方をするために、「物語」をそのヒントにするという内容になっています。
映像関連書籍というのは、時に専門的な内容や見たこともない映画が取り上げてられていたりして、すべてを読み進めることに苦痛を覚えるような書籍も多いです。
しかしこの書籍はあまり詳細な説明にとわられることなく、また取り上げられる映画もアニメ「鬼滅の刃」であったりと、キャッチーな題材が使われています。それらをもとに自分の人生になぞられるヒントが提示され、終始わかりやすく読み手が興味を持続できる内容になっています。
なおシステマティックな物語制作方法などときくと、ストーリーの自由度が落ち、物語が型にはまったものとなり、物語のダイナミズムがうばわれてしまうのではないかと心配される人もいるのではないかと思います。これに対して、たちばな やすひと氏は以下のように書籍にて語っています。
ストーリー理論を学ぶことの意味について、
「型にはまるのがゴールではなく、それを超えたところに行くために型が必要なのです。p272」
と書いています。
「型を超えたところへ行くために型が必要」なのであってよりゴールにちかいところからスタートをしてみてはどうかという提案をしています。
自己啓発本に分類されている可能性の高い当書籍ですが、その内容は物語構築(ストーリー構築)についての専門的な知見が随所でわかりやすく提示され、ストーリー性ある企業ブランディング動画を作成するすべての人に参考になる書籍ではないかと思います。
本書の概要は以下のような構成になっています。
ひとの人生のほか、近年ではビジネスにおいても商品・サービスやそのメリットだけでなく、「ストーリー」が語られ、そこへ至る過程に注目が集まっている。
物語の核となる、目的のとらえ方について解説。「何に期待すればいいのか?」を考えことの大切さや事例を紹介。「CQ(セントラル・クエスチョン)」という概念を用いて説明されます。
視聴者の関心を途切れさせない「展開」について解説。ミュージシャン坂本龍一氏の「緊張からの緩和・解決」という言葉から人の心を動かす原則を説明したうえで、それらの連続であるドラマカーブという考え方を紹介。
物語を豊かにする7種の登場人物について解説。それぞれの物語における役割などを説明。
ひとはなぜ感動するとか?なぜ共感するのか?と人の心を動かすものは何かという感動のメカニズムについて著者たちばなやすひとの持論を解説。
これまでの内容のまとめたうえで、「物語」の源泉は「自分の世界観」であるとし、その世界観とは何かを説明。本書はそのゴールとして、世界観をみいだすため「自分自身と向き合い、自分を深く理解する」ことを目指し、自分の物語をみつけそれを希望のつまった始まりとしてほしいとして本書が締めくくられる。
本書の要約については、ほかのサイトでも多く取り上げられています。ここでは、本書の中でも、特にブランディング動画制作をする際にぜひ知っておきたいポイントについて紹介します。
CQ(セントラル・クエスチョン)とは、何を期待してみればいいかを指し示すもののことです。
ストーリーの軸となるもので、「主人公はお姫様を助けることができるだろうか?」「主人公は世界を救うことができるだろうか?」など、見る人が「何に期待してみればいいのか?」を表現したものです。上記のようなユーザーの問いかけや、遂げるべき目的や、克服すべき課題などを指します。
CQで最も大切なことは、相手に期待をさせるということ。逆に相手に期待をしてもらえないCQは意味がないと言い切ります。
さらにこのCQには3つの型に分類しています。
本書では「1.主体+目的」について「ONE PIECE」、「2.主体+客体の目的」について「水戸黄門」、「3.主体+障害」について「鬼滅の刃」などを例に出して解説しています。
またマズローの5段階要求説をCQとむすびつけ、CQは切実であればあるほど良いとし、このCQが魅力的だと人は共感し、最後まで見届けてくれると説明します。
なおCQで提示された目的が、達成できなくても、時に私たちはその敗れ去った人に感動することや応援したくなることがあります。このメカニズムとして物語の展開をあらわす「構成」についての説明が次の章へと続きます。
これまでプロモーション動画CMといえば、商品の宣伝、認知を目的として、ユーザーの興味の有無にかかわらず、番組と番組の間に強制的にみさせられる不要のものとして放映されることが大半でした。
しかし動画の視聴についてインターネットがテレビを追い越し、スマホの普及率が9割を超え、誰でも手元で見たいときに見たい動画がみられる現在において、かつてのようにテレビ放送番組の途中にはさみこみ「とりあえず見せる」という手法が難しくなってきました。
企業・商品サービスPR動画は、ユーザーがみたいと思う動画コンテンツ、ユーザーが進んで視聴するものが、今後ますます求められるようになってくることが予想されます。
そこでユーザーをひきつけるための一つの方法は「ユーザーに期待を持たせるということ」です。つまり本書の言う、セントラル・クエスチョンをいかに打ち立てるのか?ということになります。つまりブランディング動画制作においてもこのCQが成功の鍵というわけです。
「『物語』の見つけ方」では、結果でなくプロセスの魅力を引き出す「構成」、より豊潤な意味や価値ある物語に仕立てるためのキャラクター設定、感動とは何か?そして、物語の源泉となる「世界観」について、CQと同様にわかりやすく解説されています。ブランディング動画制作の際には、ぜひ目を通しておきたい一冊です。
また本サイトでは、映像関連の賞の受賞歴を持つ企業ブランディング動画制作会社の中で、特におすすめしたい会社を3社紹介しています。それぞれ会社の色がありますので、どの会社に依頼をしようか考えている方は、ぜひこちらをご覧ください。
企業の魅力を効果的に伝えるには、文字や画像だけでなく視覚的なアプローチが重要です。動画を活用することで企業の文化や価値観を直感的に届けることができ、ブランドの独自性を視覚化することで競争力を高め、顧客や従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。ここでは、そんな企業向けのブランディング動画制作を依頼できる、おすすめの3社をご紹介します。